工事仕様を決める際にこれがいいからとあまり説明してもらえなかったわ。

説明されてもあんまり意味わからないクマ

今回はこの様なお悩みを解決します。

こんにちは、どんぐりです。
国家資格「1級建築施工管理技士」を持ち、マンション大規模修繕工事の所長をしている私が、階段の防水の仕様についてお話していきます。最後まで読むと、どの仕様がおすすめか分かりますので最後まで読んでいってくださいね。
階段の防水は必要か
大規模修繕工事を迎えるにあたって、 設計会社に草案の作成を依頼する 管理組合様がほとんどだと思います。
私達が工事する際に、なぜこのような仕様になっているんだろう?と、不思議に思う事がよくあります。
今回はその中でも階段の防水についてお話したいと思います。
階段の種類
マンションの階段は大きく分けて3種類あります。
外部階段 | コンクリート製で建物の外に張り出してついているタイプの階段。 雨風にあたりやすい。 |
内部階段 | コンクリート製で、建物の内部に設置されている階段。部屋と部屋の間に階段室がある形状。 雨風が当たりにくい。 |
鉄製の階段 | 建物の外部に別に取り付けてある鉄製の外部階段。雨風に当たりやすい。 |
今回は鉄製外部階段以外の内部階段と外部階段についてお話します。
内部階段の防水
内部階段へ雨水などが侵入する事は稀です。
新築時の仕上げがコンクリート仕上げの場合は もともと防水が施されておりませんので、一回目の大規模修繕工事の際に防水する優先度は低いと考えます。
漏水するならば、大規模修繕工事までの10数年で漏水しています。
ただし、仕上げを塩ビシート貼りに変更して防滑性や高級感を狙う場合は、巾木とシート下10センチの重ね分のウレタン防水は施工しておくべきです。
塩ビシートを貼ってしまうと、シート下の防水はできなくなってしまう為です。
設計者が全面ウレタン防水を提案してきた場合は必ず断ってください。
ウレタン防水は硬化までに時間がかかります。
玄関前でウレタン防水を全面施工してしまうと、非常に通行しにくくなります。
また、全面ウレタン防水は思った以上に滑りそうにみえます。
滑らないようにノンスリップ用の材料を混ぜて塗布しますが、ツルっとピカッとした見た目から恐怖感がでます。
外部階段の防水
外部階段の防水はもともとコンクリート仕上げの建物が多いです。
一回目の大規模修繕工事の際にほとんどの設計者は、フルスペックの提案をしてきます。
側溝、ササラ(階段の巾木部分)のウレタン防水+階段の塩ビステップ+踊場の塩ビシート です。
これは提案としては間違っていません。
防水を施しながら高耐久と高級感を兼ねた仕様の提案です。
しかし、問題点としてやはり費用が高い。
そこで費用削減案として、 ウレタン防水全面塗布の提案をしてくる設計者がいます。
もちろん、歩行部においても保障がでますので間違った仕様ではないのですが、個人的には全くおすすめしません。
まず一つ目は、やはり滑る。
ノンスリップ材を混ぜて塗布しても、雨が吹き込んで濡れると滑ります。
二つ目に、耐久性に劣ります。
ハイヒールや下駄、傘の先など尖ったものでウレタン防水を突くと簡単に穴があいたり、捲れたりしてしまいます。
三つ目に施工性です。
ウレタン防水+塩ビシートの場合は、ほぼ通行しながらの作業が可能で、階段ステップと踊り場の貼付け時の一時間程度の通行止めで済みますが、
全面ウレタン防水で施工する場合は約四日間の階段通行止めが必要です。
階段は非常通路でもありますので、やはり完全通行止めは避けたいところです。
本当の費用削減案とは
費用削減案として設計者からでてくるのは上記のようなものでしょうか。
しかし、よく考えてみてください。
外部階段の下にもし漏水したとして、大きな問題になるでしょうか。
確かに、クラックが発生したり鉄筋を錆びさせたりといいことはありません。
ただ、外部階段は本体の構造物ではないのです。
建物が倒れたりすることに発展することはありません。
下階に水が漏れたとしても、居室があるわけでもありません。
新築からいままで、コンクリート仕上げで保ってきたのです。
元仕様のまま、コンクリート仕上げで済ませるのがもっとも費用を削減させます。
ほんの少しだけ費用が下がった全面ウレタン防水をするのが、もっともコストパフォーマンスが悪いと思います。
設計者の説明責任
設計者は工事の仕様を決めるにあたって説明責任があると考えます。
全面ウレタン防水でやれば費用削減できますよ~!
そのあとに、前項のような問題点も説明し決定をしなければならないのですが、私の経験上、ほとんど管理組合様が説明を受けていません。
全面ウレタン防水を施工したあと、設計者に抗議した管理組合様もあります。
そちらは施工前に私の方から
滑りますよ大丈夫ですか?
通行止め期間も長いですよ?
など、管理組合様にご提案したものの、監理者の問題ないの言葉で、全面ウレタン防水で決定し施工しました。
施工後待っていたのは、滑りそうで怖い・雨の日は光って恐怖心が凄い・ハイヒールが刺さった
このような居住者の声が飛び込みました。
管理組合様は、 監理者に抗議し、最終的にはウレタン防水の上に塩ビシートを貼る事になりました。
費用削減を狙ったのに、フルスペックの仕様よりも費用がかかってしまう結果となりました。
まとめ

高級感と防水が必要なら初めからフルスペック。
費用がないなら、元仕様通りで防水しない、仕様が変わる場合は設計者に必ず説明してもらう。
設計者が出してきた案をそのまま受け取るのではなく、本当に大丈夫なのか?しっかりと聞いて納得する事が大切です。
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