大規模修繕工事が予定されているが、どんな色にするか悩んでいる。
色によってどう印象になるか知りたい。

こんにちは、どんぐりです。
国家資格、1級建築施工管理技士で、大規模修繕工事の現場所長をしている私が、マンションの色の決め方についてご説明していきます。最後まで読んでいってくださいね。
色の選定方法は2つ
大規模修繕工事の際、建物や鉄部の色をどう決めるか。
この部分で結構問題になる場合があります。
オーソドックスな決め方としては2つ。
☆理事会で案を絞り、居住者アンケートを実施し、結果を参考に理事会で決定。
もっともオーソドックスな決め方です。
居住者全員の意見を聞いてから決定しますので、あとから問題になりにくい選定方法です。
問題は結果が拮抗した場合で、最終結論は理事会となります。
決定した内容を説明する必要があります。
また、アンケートを実施しますので、期間が必要になります。
☆理事会でのみ決定する。
アンケートを実施せず、理事会・修繕委員会にて決定する方法です。
メリットは期間が少ない場合に素早く決定しますので有利。
デメリットは、その他の居住者様に選択の余地を与えていませんので、施工後に不満が出てくる場合があります。
そのため、現状もしくは新築当初の想定色で塗り替える場合に採用されることが多い選定方法です。
居住自治体の景観条例を確認しよう
色が決まったー!さぁ塗り替えだ!
ちょっと待ってください。各市町村によって景観条例の内容がかなり違います。
有名なのが京都市で、シックな色合いに制限されています。
ご存じの方も多いと思いますが、大手コンビニエンスストアでさえ、店舗カラーが使えません。
マンションにおいても景観条例は適用されます。
この、色はダメだとか、この数値以上の濃さはダメなど細かく決められています。
条例の範囲内で色を決定しないといけません。ピンクと白のボーダーとかダメよ!という事です。
また、新築時と同じ色を塗る場合も、大規模修繕工事までの間に、新たに条例が発令され同じ色で塗装できない場合があります。この点にも注意が必要です。
また、景観条例の提出期限などにも気をつけないといけません。
ある市では、月に1度しか景観条例の委員会が開かれず、その日を逃してしまうと審査が1か月先になってしまいます。
このような自治体での工事の場合は、工事が始まってからアンケートを実施すると間に合いません。
工事前からアンケートを実施し、工事着手時には景観条例の申請ができている状態が望ましいです。
「工事始まってからきめればいいか~」と思っていると大変な事になる場合があります。
工事の施工会社が決まってからでは遅い場合もありますので、設計監理の会社と契約している場合は工事設計時に確認してもらっておくのがよいでしょう。
色を決めよう!
新築時と同色で塗る場合、色番号が残っている場合はよいのですが、残っていない場合は劣化してない場所で試料を取り、想定の色を作成します。
また、大規模修繕工事時には建物の色は劣化した色となっていますので、新築時の想定色を塗ると思ったよりも色が変わる事があります。
それを嫌う場合は、大規模修繕工事時の劣化した色に近い色で塗る物件もあります。
色を変更する場合、メインカラーを大規模工事の度に濃くしていく事が多いです。
それは、新築時は若い家庭が多く、築年数を重ねていくとご年配の家庭が増えていく事で、落ち着いた色を望まれる事が多いです。
☆色を濃くする場合
色を濃くすると、一般的に高級感がでます。
また、以前の色よりも汚れが目立ちにくくなることが多いです。
デメリットとして暗く見える場合があります。
☆色を薄くする場合
色を薄くすると、明るく新鮮な感じになります。
あと膨張色に近くなりますので建物が大きく見えがちです。
デメリットとして黒い汚れが目立ちやすくなります。
☆メインカラーとアクセントボーダーの関係
メインカラーが決まると今度はアクセントカラーをいれるかどうか協議します。
一色だけで仕上げるよりも、アクセントが入る事で建物の印象が締まって見えます。
アクセントカラーにおいては一般的にメインカラーよりも濃い色をアクセントに選定される場合が多いです。
ただし、私の経験でメインカラーを高級感を狙ってかなり濃いめに選定し、アクセントカラーとして手摺ボーダー部に薄いベージュを選定された建物がありましたが、高級感をだしながらすっきりとしたラインで新鮮さも出てかなりご満足いただける結果となりました。
設計時もしくは工事施工時にカラーシミュレーションというイメージ図を用意致しますので、いろいろ皆様で提案して検討してください。
ただし、イメージ図の作成には時間がかかるので、早めに動き出すのがキモですよ!
色を絞る
からシミュレーションが出揃いました。でも10数種類も候補があると、アンケートを取っても意見が割れてしまって決定しません。
ここで理事会様や修繕委員会様で案を絞っていく作業が必要です。
多くの場合、候補を3案決定します。一番手の候補が約過半数に近い得票を取れる数になります。
候補を絞るにあたって、まず基本とするのは現状と同じ色、パターンのものです。
これを①案とします。残りの2つの案の決め方をご説明します。
☆色の濃淡で提案する。
①案の同色彩の色の淡色を②案、濃色を③案として提出します。この場合、前項の新鮮な感じの案と高級感を出した案で選べるので、この方法で選択される場合が多いです。
☆アクセントパターンで提案する。
①案を基本として、手摺下ボーダー部などの色見を変え提案します。
アクセントカラーを変えるだけでも印象がかなり変わります。
☆色彩自体を変更する。
もともと白い建物だったものを、ベージュ系に変更する。
また、その逆など。思い切って色彩を変更するものを提案します。
濃淡やアクセントのものと違って、建物の雰囲気が大きく変わってしまう為、塗装後に意見の相違などで問題が起こる事があります。
色というものは個人個人で受け取られる印象が変わってきます。
100%の居住者様の意見が一致することはほぼ皆無です。
それでもなるべく多く方にご賛同いただけるような色を選定し、決定後速やかに全居住者様へのご説明する事が肝要です。
まとめ

①景観条例の提出期限や範囲を設計時に把握しておく!
②色彩アンケートはなるべく早く実施する!
③色の選定は万人受けするように気を配る!
④わからないことは設計者に聞く!